テキサス・インスツルメンツ(TI)が産業用通信規格の次世代標準となるCAN XLトランシーバの商用化に初めて成功した。自動車や製造装置、ロボットシステムといった産業機器の通信基盤を大きく変える可能性を秘めた発表である。
次世代産業通信の要となるCAN XL
CAN XLは従来のCAN(コントローラエリアネットワーク)の後継規格で、通信速度と処理容量が飛躍的に向上している。既存のCANは最大1Mbpsの通信速度に限定されていたが、CAN XLは10Mbpsの高速通信を実現。データペイロードも従来の8バイトから最大4095バイトへ拡張され、複雑な産業システムでの大容量データ転送が可能になる。トランシーバはマイコンと物理層通信線を仲介する電子部品で、この部品の商用化がCAN XLの実装を加速させる鍵となる。TIのトランシーバは業界標準認証を取得しており、産業用途での信頼性が担保されている。
製造現場とスマートシティの需要に応える
製造業のデジタル化、特にインダストリー4.0推進に伴い、機械同士の高速通信ニーズが急速に高まっている。自動運転システムやAGV(自動搬送車)、協働ロボット、さらにはビル管理システムといった応用先では、従来のCANでは対応できない複合的なセンサデータやリアルタイム制御信号の伝送が求められる。CAN XLの高速化と大容量化はこうした要求を満たす。また、既存のCANシステムとの後方互換性を保つ設計により、既存インフラへの投資を活かしながらの段階的な移行が可能とされている。
日本の産業基盤への波及効果
日本は自動車、工作機械、ロボット製造といった産業用制御技術で世界有数の地位を占めている。これらの産業はCANを基本的な通信規格として採用しており、CAN XLの実装は国内産業の競争力維持に直結する。TIは世界的なアナログ半導体大手であり、同社のトランシーバ商用化により、欧州のシーメンスやドイツの自動車部品メーカーなど国際規格推進団体のロードマップが現実化する。日本メーカーも急速に対応製品を開発・投入する動きが加速するとみられている。
