産業・製造

ラック・ピニオン機構、ボールねじ超える長距離軸設計の実力

ロボットアームの長距離移動軸を設計する際、ラック・ピニオン機構がボールねじやリニアモータを上回る性能を発揮する場面がある。精密な直線運動を実現する三つの主要技術の特性と、それぞれが活躍する領域が改めて整理されている。

三つの直線運動技術の基本原理

機械における精密な直線運動は、ラック・ピニオン、ボールねじ、リニアモータの三つの技術で実現される。ラック・ピニオン機構は回転するピニオン歯車が歯付きバーのラックに噛み合うことで動作する。設計によってラックが移動する場合と、ピニオン組立体が固定ラックに沿って移動する場合がある。ボールねじは精密なねじ山を持つロッドにナットが沿って移動する仕組みで、ロッドを回転させるとナットが直線移動し、ナットを固定するとロッドが移動する。リニアモータは電動モーター開放型で、永久磁石と電磁石のセットが対応する磁石と磁気相互作用により直線運動を生じさせる構造だ。

長距離移動に優れるラック・ピニオン

短距離ではボールねじとラック・ピニオンが競合する領域に位置し、ボールねじはより高い精度を提供できる。しかし長距離に及ぶと状況が変わる。ボールねじは長さが2~3メートル程度に達すると「ホイップ」と呼ばれる現象が発生する。ロッドが跳び縄のように振動し、早期摩耗や振動、場合によっては破壊的な故障を招く。対してラック・ピニオンは長さへの対応が容易で、ラックを短くカットしたり複数の部品を組み立てることで、ほぼ無限にスケーリングできる。追加のラック部品を加えるだけで長距離移動に対応できる柔軟性がある。

コストと環境適応性の視点

リニアモータは速度と精密制御に優れているものの、磁束の管理が難しく、磁石の存在によって問題が生じやすい。磁場の強さから金属を帯磁させるなど、作業環境に影響を与える側面がある。長距離対応の場合、リニアモータを延長するメートル単位のコストは、ラック部品を追加する場合より圧倒的に高い。永久磁石と電磁石は高額であり、リニアモータは位置保持のために常時電力が必要で、消費電力も供給力に比例する。ラック・ピニオン方式は回転停止時に逆駆動力で位置を保持し、モータブレーキで保たれるため継続電力が不要だ。総合的なシステムコスト、パッケージサイズ、消費電力の面でラック・ピニオン方式が有利となる場面が多い。清浄室環境ではラック・ピニオンの歯部分に潤滑が必要なため、適用上の制限が生じる可能性がある。技術選定は用途の特性に応じた検討が重要となる。

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