魚のような間欠的な遊泳運動がロボットのエネルギー効率を大幅に向上させるという研究成果が報告されました。スイス、米国、ポルトガルの国際研究チームが開発した幼生ゼブラフィッシュ型ロボット「ZBot」を用いた実験により、自然界で見られる「活動フェーズと受動的グライドを交互に繰り返す遊泳スタイル」がロボットの稼働時間延長とバッテリー負荷軽減に有効であることが実証されました。
生物の知恵を応用したロボット設計
研究チームはEPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)、デューク大学、Instituto Superior Tecnico(ポルトガル)から構成されています。開発されたZBotは幼生ゼブラフィッシュを200倍に拡大した設計で、体長80センチ、重さ2.8キログラムの水中ロボットです。実際の魚と同様に分節化された体構造と重心分布を再現し、6つのサーボモーター駆動セグメントで構成された柔軟な尾部により、自然な魚類の波状運動をシミュレートします。頭部には神経系に相当する中央制御装置、高精度カメラ、リアルタイム電力計測装置を搭載し、拡張可能なセンサーインターフェースにより視覚運動処理や前庭系研究など多様な実験に対応できます。
神経回路の仕組みを再現した制御システム
研究チームは中枢パターン発生器(CPG)、出力ゲートモジュール、腹側脊髄投射ニューロンを中心とした神経計算モデルを構築しました。CPGが継続的な律動信号を生成し、出力ゲートがこれを制御することで、閾値に達したときだけ尾部の波状運動を発動する仕組みです。この機構により「活動フェーズと受動グライドの交互」という自然な間欠泳法が実現されます。パラメータ調整を通じ、ZBotは直進泳、回転、J字ターンなど幼生ゼブラフィッシュの複数の遊泳様式を正確に再現しました。
実装への道筋
自然界では幼生ゼブラフィッシュから鯨まで、様々なサイズの水生生物が間欠泳法を採用しており、数十億年の自然選択を通じて最適化されたエネルギー節約戦略として認識されています。ロボットシステムにこうした生物由来の運動メカニズムを組み込むことで、稼働時間の延長とバッテリー負荷の軽減が実現でき、より軽量で柔軟性に富んだロボットの開発が可能になるとみられます。本研究は生物工学的アプローチがロボティクスの最適化に如何に有用であるかを示す事例として、今後の水中ロボット開発に指針を与えるものといえます。
