脚型ロボットで知られるAgility Roboticsが、新型ヒューマノイド「Digit 5」の発表動画に車輪搭載型ロボットの映像を含めたことから、同社の戦略的な次の一手が見えてきた。脚型ロボットの開発を主軸としてきた企業が、なぜ車輪型への関心を示すのか。その背景には、急速に成長するロボット市場で、より多くの顧客ニーズに応える必要性があるとみられる。
脚型と車輪型の使い分け戦略
Agility RoboticsのCEOで最高ロボット責任者のジョナサン・ハーストは、複数のロボット設計形態を検討していることを明かした。脚型ロボットの安全性と信頼性が向上し続けるにつれ、より幅広いアプリケーションに対応できるようになる一方で、車輪型は現在のところ、より迅速にロボット技術を多くの環境に導入する手段となり得るという。脚型ロボットは階段や不規則な地形など、人間向けに設計された環境での活動に優れている。対照的に、車輪型は平坦で予測可能な環境において、安定性が高く、構造がシンプルで、エネルギー効率に優れているという特性を備えている。
商用化急ピッチのなか迫られた現実的選択
Agility Roboticsは現在、SPACを通じてChurchill Capital Corp. XIとの合併を進めており、企業価値は25億ドルと評価されている。既存顧客から3億ドルを超える複数年のDigit v5発注を受けており、今後数年間での納入を予定している。一方、2025年の売上高は180万ドルに過ぎず、営業損失は1億4000万ドルに達している。商用化段階では多様な形態のロボットを提供することで、より多くの顧客ニーズに対応し、収益拡大を図る必要性に直面しているのだ。
設計思想の柔軟な進化
Digit 5では従来モデルの特徴的な逆向き膝構造を廃止するなど、Agility Roboticsは設計哲学そのものの見直しを進めてきた。ハーストは具体的な車輪型ロボットの形態や市場投入時期については「まだ決定段階ではない」と述べており、同社が市場の現実に応じてロボットを適応させていく姿勢を示している。脚型ロボット研究の第一人者である同CEOが、開発戦略の根本的な転換を受け入れたことは、ロボティクス産業全体の成熟度を象徴する出来事といえるだろう。
