スイスの自律点検ロボット大手ANYboticsが、四足歩行ロボット「ANYmal」向けの統合運用プラットフォーム「Shift」を発表した。複数のロボットによる点検ミッションの計画・実行から現場データの管理まで、資産保全業務全体をワンプラットフォームで統合できるのが特徴だ。
予防保全がもたらす経済効果
世界の大手500社において、検出されない設備故障による年間ダウンタイムコストは推定1.4兆ドルに達し、1時間の稼働停止で平均25万ドルの損失が発生しているとANYboticsが指摘する。Shiftはこうした未然防止的な保全を実現するため、自動化された点検データを既存の資産管理システムに直結させる仕組みを備えている。プラットフォームは工場マッピング、ロボット群の統合管理、点検データの人工知能解析、企業システムとの連携を単一インターフェースに統合。現地で収集したデータが直接メンテナンス指示書へ変換される設計により、計画外のダウンタイムを削減できるとされる。
低い導入障壁と拡張性
Shiftは初回導入時にエンタープライズシステムとの統合作業がほぼ不要との特徴を持つ。ロボット群の運用と検査結果の報告は初期段階で独立して機能し、ユーザーが準備できた段階で既存ソフトウェアスタックとの接続を進める形式を採用している。SAP、GE Vernova、Siemens Energy、Cognite、SLB、Yokogawaとの提携により事前構築された統合機能が提供される。これら以外のシステムに対してはREST APIを通じた接続が可能で、既存の保全管理システムや資産性能管理プラットフォームとの双方向統合を実現する。プロセス閾値の超過は自動的に新たなロボット点検を発動し、メール、Microsoft Teams、将来的にはSMSやWhatsAppなど複数チャネルでリアルタイム通知が配信される仕組みとなっている。
グローバル展開と日本市場への可能性
1916年に設立されたANYboticsはチューリッヒを拠点とし、エネルギー、電力、金属、鉱物、化学産業を中心にグローバルに展開している。四足歩行ロボットは定期点検と実時間データ収集に適し、労働力不足の緩和と作業員の安全性向上に貢献するとされる。Shift Maps機能はデジタルツイン技術により製造施設の現況を可視化し、検査対象を資産IDベースで既存の資産管理インフラに統合する。トレーニング期間は数週間ではなく数日程度で、ロボティクス分野の専門知識を要しない設計となっている。日本の製造業における予防保全の高度化を実現する選択肢として、グローバルな点検自動化プラットフォームの浸透が進むとみられる。
