ロボティクス企業のSkild AIが、汎用ロボット脳の実現を目指す旗艦モデル「S1」を発表した。2023年の創業以来、約17億ドルの資金調達を行ってきた同社にとって、S1は開発戦略の集大成となる製品である。
動画1本からの学習が可能に
S1の最大の特徴は、ロボットが単一の動画を見るだけで新しく複雑なタスクを習得できる点にある。同社が採用する「インコンテクスト学習」という技術により、人間の行動を映した動画をモデルの入力(プロンプト)に追加するだけで、ロボットはそれを実行できるという。Deepak Pathak最高経営責任者によれば、S1が対応するタスクは極めて複雑で長時間の作業を想定している。従来のロボット用AI モデルは新しいタスクに対応する際、再学習(ファインチューニング)が必要でこのプロセスが実装の足かせになっていた。S1はこの課題を克服し、ロボティクスの大規模展開に向けた道を切り開くとみられる。
複数データソースの融合戦略
S1の開発で重視されたのは、複数の学習データ源を組み合わせるアプローチである。人間の動画データは多様だが、ロボットの動作特性とは異なるため、グローブセンサーやテレオペレーション(遠隔操作)データと組み合わせることで補完している。Pathak氏は、多くの競合企業が単一のデータ源に依存する傾向を指摘し、包括的なアプローチが必要だと強調した。注目すべきは、S1が最大10分程度の長時間タスクに対応する点で、植物の植え替えやコーヒー作製、パンケーキ調理など実生活に近い作業を実行できる。パンケーキを焼くシーンでは、学習データに類似する動作がなかったにもかかわらず、ロボットがフライ返しの動作をスパチュラの움직임から推論して実現したという。
汎用性と今後の展開
S1は「オムニボディ」という特性を備えており、四足歩行ロボットからヒューマノイドまで、さらには固定型アームなど異なるロボット形態全般に対応可能である。ただし、ヒューマノイドへの最適化はまだ進行中とされ、今後の改善が予定されている。Pathak氏は大規模言語モデル(LLM)の発展過程になぞらえ、ChatGPTの登場がファインチューニング不要の時代をもたらしたように、ロボティクスも同様の転換点を迎えつつあると述べた。一方で、実用化の段階ではまだ途上にあり、家庭への導入については完全には準備が整っていないとの見方も示している。同社は今後数週間のうちにS1が生産現場で既に活用される事例を公開予定であり、この進展が顧客獲得を加速させるとしている。
