脊髄損傷患者の「立つ」を取り戻す――フランスのWandercraftが開発した外骨格ロボット「Eve」が、米国食品医薬品局(FDA)から商用化の認可を得た。自己バランス機能を備えた世界初のパーソナル外骨格として、車いす生活者に新たな選択肢をもたらす可能性を秘めている。
自動バランス機能がもたらす自由度
Eveの最大の特徴は、松葉杖やウォーカーなしに自動でバランスを保つことにある。装置は硬質ベストのように装着され、体幹から足まで複数の帯で固定される。12個のモーターが股関節、膝、足首に組み込まれ、搭載されたセンサーが常にバランスを読み取り、補正を行う。ユーザーはジョイスティックで全ての動きを操作――座る、立つ、前進・後進、旋回、横歩きが可能だ。最高速度は時速0.56キロメートルに抑制されており、安全性を最優先にした設計になっている。フル充電時の稼働時間は最大4時間とされている。
臨床試験で実証された実用性
FDA認可の根拠となったのは、Kessler FoundationとJames J. Peters VA Medical Centerで実施された臨床試験である。16組の患者と介護者が参加し、そのうち7名は四肢麻痺(頸部損傷)、9名は下肢麻痺(胸部損傷)を抱えていた。参加者は医学スクリーニングと4回の訓練セッション後、3分以内に立ち上がり歩行して座り直すテスト、および6分間の歩行テストに挑んだ。15名が10分以内に装着を完了し、全員が同時間内に脱着できた。約69パーセントが目標歩行速度に達し、87.5パーセントが扉の開閉や調理といった6つの日常タスクをこなした。
現実的な制限と使用条件
Eveは車いすの代替ではなく、友人と目を合わせて会話する、食事の準備をする、家の中で他人の手を借りずに移動するといった「立つことが重要な瞬間」に活用する道具として位置付けられている。体重100キログラム以下、身長194センチメートル以下というユーザーの制限があり、室内の平坦な床のみの使用に限定される。階段、段差、斜面、濡れた床、混雑した場所、屋外は対象外である。介護者の同伴が必須条件であり、認定された訓練を受けた者が常に傍にいる必要がある。電源喪失時には自動ブレーキ機構が作動し、ユーザーは緩やかに地面に降ろされる。脊髄損傷の位置を問わずジョイスティック操作が可能なユーザーであれば利用できる可能性があり、装置は個々の身長、脚長、関節の柔軟性に合わせてカリブレーションされる。臨床試験では17件の安全上の事象が記録されたが、そのうち8件がデバイス関連で、主に皮膚刺激と筋肉痙攣であった。転倒事例は1件でありながら負傷はなく、安全性上の懸念を理由に脱落した参加者は いなかった。
