月面探査に自律型ローバーの群動作が不可欠になる。NASAが2026年後半に打ち上げる予定の「協調型自律分散ロボット探査ミッション」(CADRE)は、3台の小型ローバーを月面に送り込み、人間からの指示を受けずに自らの判断で探査活動を進める実験を行う。これが成功すれば、地球外での複数ローバーの自律運用は人類初の試みとなる。
自分たちで判断し、チームで探査する
CADREミッションでは、3台のローバーが地球を向いた月側に着陸し、約2週間にわたって一定の地域を自律的に地図化する。重要な特徴は、ジョイスティックによる遠隔操作がまったく行われない点だ。ローバーたちは自ら指導者を決め、タスクを割り当て、バッテリー残量が低下したメンバーが出た場合はグループ全体で計画を再編成する。地球から月までは約38万4,000キロメートル離れており、地上からのリアルタイム制御は現実的ではない。
月面特有の過酷な環境が自律性の必要性を生む
月の南極地域には氷が存在し、それを化学的に分解して燃料と呼吸可能な空気に変えることで、月面経済の基盤を作る構想がある。しかし現在、月面での長期的な自動運用システムがなければ、数ヶ月単位での継続的な運営は難しい。月面では通信が不安定になる。クレーターの縁が中継衛星への通信線を遮り、ローバーが影のあるクレーター内に降りると信号が完全に途絶える。
月の両極では太陽光は継続的に当たらない。夜間は約2週間続き、エネルギーは有限なため、指示待ちで電力を消費することは致命的だ。加えて月面の塵は強い静電気で浮遊し、数十億年間の隕石衝撃で極めて鋭い。車輪のベアリングを研磨し、シールを貫通し、カメラレンズを曇らせる。永久影領域の気温は摂氏マイナス170度以下になり、GPS衛星も存在しないため、ローバーはカメラやセンサーから得た情報のみで自分の位置を把握せねばならない。こうした環境では、人間が各ステップを承認する運用体制は機能しない。
自動化技術の実現による月面経営の可能性
CADREの成功は、月面での無人運営を月単位で継続できるかどうかを証明する第一歩となる。単一ローバーでも月面探査は極めて危険で、機器故障や立ち往生で任務終了となるが、複数の自律型ローバーが協力して動作できれば、リスク分散と作業効率の大幅な向上が期待できる。政府契約に依存する現在の月面資源利用から、自律運用システムへの転換により、真の月面経済へと進展する可能性があるとされている。
